「処 方 せ ん 医 薬 品」 の 怪
 
 
【1】そもそもの発端は、、、。
 
医療用医薬品でも医師の指示が必要な「要指示医薬品」以外は、一般の人に販売することは薬事法違反には当たりませんでした。行政は、なるべく売らないようにと行政指導をしており、医療用医薬品を売るところは限られていました。
 ところが、ドラッグストアでOTC薬のバファリンAの隣に「お徳用パック」などとしてPOPを出し、求めに応じて医療用医薬品のバファリンを分割して売り始めたり、新潟では医療用医薬品の販売をチラシ広告で大々的にするところや、インターネットで宣伝・販売するところもでてきたりと、90年代後半から2000年代初めにかけて医療用医薬品の販売がいろいろなところでいろんな形で広がりだしはじめました。
 この事態を重く見た当時の厚労省・宮島医薬局長は日本薬剤師会の当時の佐谷会長に相談し、佐谷氏は要指示薬を廃止し医療用医薬品を全面的に「処方せん医薬品」にする代わりに、宮島氏は「要薬剤師薬」をつくることを約束したといわれています。
 こうして「処方せん医薬品」は02年の薬事法大改定に他の項目と共に盛り込まれ、この4月より施行されることになりました。
 「要薬剤師薬」はその後、日本薬剤師会・会長交代に伴いその詰めもあやふやになってしまい、また「処方せん医薬品」も、実施にあたり医療用医薬品すべてでなく要指示医薬品を拡大したものと当初の構想からはかけ離れたものとなってしまいました。
 
 
【2】「処方せん医薬品」は、、、、。
 
 要指示医薬品は、抗悪性腫瘍剤、血糖降下剤、ホルモン剤など700成分で医療用医薬品の約1/3を占めていましたが、注射剤などが指定されていない矛盾もありました。このため「処方せん医薬品」は、従来の「要指示医薬品」に注射薬、麻薬製剤、血液製剤などが加わったものとなり、約3200成分と医療用医薬品の約2/3とふえましたが、全医療用医薬品とはなりませんでした。
 全医療用医薬品でなく「処方せん医薬品」から外される医薬品がでると知った製薬各社はこれに大慌てになりました。いつも保険給付削除かと話題になり、迷える「3匹の子羊」といわれる漢方エキス製剤、パップ剤、ビタミン剤なども「処方せん医薬品」から外されており、漢方エキス製剤メーカー団体である日本漢方生薬製剤協会などは尾辻厚労相に直談判し、医療用漢方製剤を医療保険の給付対象から除外しない確約を得たといいます。しかし、財務省は「処方せん医薬品」以外の保険外しを虎視眈々と狙っているといわれています。
 
 
【3】「要指示医薬品」と「処方せん医薬品」との違いは、、、、。
 
比較表
 要指示医薬品処方せん医薬品
出し方医師の指示によるが、指示は電話なども可処方せんでないと不可
成分数約700成分、医療用医薬品の約1/3約3200成分、医療用医薬品の 約2/3
罰金(上限)200万円個人300万円、法人1億円
許可要件医療用医薬品は、医療用医薬品として認可第T種医薬品製造販売業

 「処方せん医薬品」は、全般的には「要指示医薬品」を拡大したものとなっていますが、奇異に映るのは法人の罰金上限が1億円になっていることです。
 これは、最近の薬物の不正使用・販売などによる薬物犯罪の増加に対処したものでないかと伺えます。 
 
 
【4】「処方せん医薬品」と、それ以外の具体例、、、、。
 
 ○ OTC薬でもあったが、中止され「処方せん医薬品」になったもの
        ナリジクス酸、コンバントリン(ピランテル)など
 
○ 「要指示医薬品」でなかったのに、「処方せん医薬品」になったもの
        メバロチン(プラバスタチン)、タケプロン(ランソプラゾール)など
 
○ 「処方せん医薬品」に指定されなかったもの
        ペリアクチン(シプロヘプタジン)、ロペミン(ロペラミド)など
 
 
【5】要薬剤師薬は、どうなったのか、、、、。
 
 「要薬剤師薬」に似たものとして、すでに「指定医薬品」がありました。「指定医薬品」は、薬種商が販売などをしてはいけないもので、薬理作用が激しく注意を要するものなどで、具体的にはH2ブロッカー、医療用からスイッチされた水虫薬、インドメタシンの3,75%貼付剤、ヨヒンビンなどの精力剤?などがあります。
 要薬剤師薬はこの「指定医薬品」をより幅広く、品目を多くしたもので、今回「処方せん医薬品」に指定されなかったものが要薬剤師薬の対象候補になるのではとされ、これをスイッチOTCとして推進していこうとしたのではないかと思われます。つまり、医療用医薬品と一般用医薬品の間に要薬剤師薬をはさみこもうとしたのではと思われますが、これについては想像の域をでません。
 また、当面、要薬剤師薬は浮上してこないのではないかと思われますが、いま検討されている医薬品販売制度の動きなどともあわせて、その動向を注目していく必要があります。
 
 
【6】多くの問題をかかえる「処方せん医薬品」、、、、。
 
 〇 「処方せん医薬品」以外を多く残したという事は、処方せん、つまり医療で必要ないということであり保険給付削除対象ということは、いつまでもついてまわり財務省も狙っています。
 
○ 今までも分割販売されていた多くのものは「要指示薬」以外であり、医療用医薬品の約1/3を「処方せん医薬品」以外にしたことは、分割販売できる対象医薬品を多く残した事になります。
 
〇 そもそも法律の盲点をついた医療用医薬品の販売規制を是正するのが今回の目的だったはずでしたが、「処方せん医薬品」に指定されなかったものについては行政指導でその販売を自粛してもらうとしていますが、法的な販売規制はなく、医療用医薬品の分割販売の問題解決にはなっていません。
 
〇 逆に、[処方せん医薬品]の販売については、個人には300万円、法人には1億円の上限という重い罰金がかせられており、薬物犯罪への規制からか「処方せん医薬品」販売の規制強化が目立ちます。
 
〇 また「処方せん医薬品」以外は、薬局以外の一般販売業、薬種商での販売規制もされてなく、調剤が出来ないところでも医療用医薬品が販売できるという矛盾を抱えています。
 
〇 安全対策に関係ある問題では、医薬品の製造販売として「処方せん医薬品」は「第T種医薬品製造販売業」の許可、「処方せん医薬品」以外は一般用医薬品と同じ「第U種医薬品製造販売業」の許可になり、両方とも医療用医薬品でありながら許可要件が違うことから、その安全対策にもレベルの差が生じるのではないかと云われています。
 
 
********************************************
 
 以上、今回の「処方せん医薬品」は、当初の目的から離れたもので、多くの矛盾をかかえたものになっており、何のために薬事法改定に盛り込んだのか、多くの問題を残したものとなっています。今後、いま検討されている医薬品販売制度の動きなどともあわせて、その動向を注意していく必要があります。

(2005年3月25日)
 
 その後、厚労省は、4月1日施行ぎりぎりの3月30日に行政指導の通知を出し、「処方せん医薬品」以外についても販売規制強化の指導を示しましたが、これがどのように規制効果をあらわすのか、注目されるところです。